いつもはちゃんとできるのにレコーディングでうまくできなくなる・・・。 そんな "ハマる" という現象を引き起こす要因とハマっちゃったときの対処法を伝授! プロミュージシャンがどうやってレコーディングのプレッシャーと向き合っているかを大公開!
以前レコーディングに参加した時のこと。まず自宅でプリプロ(プリプロダクション)をすることになり、 その際、ギターだけは生で録るため、自宅でちょっと弾いてもらったことがあった。そのギタリストは、リラックスした環境で、とてもいいギターを弾いてくれて、すごく良いデモができた。
ところがレコーディング本番では、 プリプロの良さがあまり出ない。そこで一時中断して本人に「どうしたの?」 と聞いてみたのだが、本人もよくわからない様子。よく言う"ハマッた"状態になってきたのだ。
自分の経験上、この環境(アンプと同じブースで弾いている) はよくないと判断し、解決策として”アンプを本人から離す”や”アンプと背中合わせになる””ミキシングルームで弾く”(※1)などを提案してみた。最終的にはミキシングルームで弾くことにしたら、その後はいい感じで出来あがった。これは自分が実際に、同じような経験をしたことがあったのだ。
レコーディングでハマるって事はすごく恐いこと。まして、プロの現場では許されない。以前ギタリストの方から聞いた話で、レコーディングでハマってしまい「もう明日はこなくていいよ。」と言われた事があったそうだ。時間でスタジオを借りている制作サイドにとっては、いつまでも一人に時間をかけていられない。代わりはいくらでもいるということだ。そこで、肝心な時にハマらないために、日頃から気を付けておくことを考えてみた。
「ハマる」という現象を引き起こす要因としいて、3点が考えられると思う。
「ハマる」という現象を引き起こす要因1 メンタル的要素
”場慣れ”していないための緊張や、時間の制約からのプレッシャーなどメンタルなストレスによっておこる。これはもう場数を踏むために、録音するという環境になれるようにするしかない。録音できる機材で普段からマメにレコーディングをしてみる。僕はこの方法で、随分打開してきた。
「ハマる」という現象を引き起こす要因2 リハーサルスタジオの環境
普段の練習で使うリハーサルスタジオでは、正確な音が分かりにくい。それはバンドの場合、一斉に演奏するので、細かい部分が聞き取りづらいのだ。そのため、自分では弾けているつもりでも、実際は意外とズレている事がある。これがレコーディングの際に目立ってしまう。「いつもと同じように弾いているのに」と思った場合、その”いつも”がズレていたという事になる。
そこで、リハーサルでは、自分の音をできる限り下げることが大事。下げるの?と思われるかもしれないが、下げる事によって、他の楽器の音が良く聞こえるので自分のリズムや、演奏が安定してくる。強制的に聞く環境にするというわけだ。(これはロックバンドの場合、ドラムからは嫌がられたりする。自分もよくギターが聞こえないからノレない!(笑)といわれた。)こうすることで、いいフレーズはちゃんと聞こえてくるようになるし、何が必要で何が邪魔かが分かり、いろんな事が見えてくる。これはいい方法だと思う。
「ハマる」という現象を引き起こす要因ヘッドフォンの調整
「リハーサルスタジオの環境」の内容と重複するのだが、他の音をちゃんと聞くために、レコーディングでのヘッドフォンの音量を大きくしない。っで自分の音を下げ目にする。ヘッドフォンの音量は、日常でCDを聞く時の音量くらいが調度いい。(普段も爆音で聞いているという場合は別だが。)この方法は、プロデューサーの笹路さんから教えてもらったことだ。
※1:ダイレクトにアンプの音が聞こえないようにすることが大事なのである。
ブースの数が無く、アンプと同じブースで弾かなければならない場合は、アンプと向い合せにならないようにセッティングする。なるべく背中合わせくらいにセッティングして、ヘッドフォンの音だけが直接耳に入ってくるようにする。なぜかというと、ヘッドフォンからの音は空気振動がなく直接耳に入ってくるのに対して、アンプの音量がヘッドフォンの音量を上回っている場合、時間差ができてしまい、適格なモニターができなくなり、リズムが合わなくなる。それを回避するため、ダイレクトにアンプの音が聞こえない様、ヘッドフォンのバランスをとってプレイする。ミキシングルームで弾くというのが1番いい方法だと思う。モニタースピーカーで聞いて弾くもよし、ヘッドフォンをするもよし、とにかくいろいろ話ながらできるので、僕はこのスタイルが1番すきかな。この、ヘッドフォンの使い方に関しては、まだ細かい使い分けがあるので、そのことについては次回以降また掲載します。